東京高等裁判所 昭和48年(ネ)1858号 判決
よって案ずるのに、真実嫡出子でない者が虚偽の出生届により戸籍簿に嫡出子として記載されたからといって、その一事により嫡出子たる身分を取得するいわれもなく、また認知の訴の要件である民法七七九条にいう「嫡出でない子」たる身分を失う筋合でもない。なるほど戸籍簿の記載は身分関係を登録公証するもので、それは一応の真実性を有することの推定を受けるとはいえ、実体を形成するものではないのであって、戸籍上嫡出子との記載の訂正の手続を経た後でなければ、前提問題として戸籍の記載に反した主張をすることができないとまでいうのは行き過ぎである。本件の事案においても、もし、控訴人主張のとおり、控訴人についての戸籍簿の記載が真実でなく被控訴人と控訴人との間に父子関係が存することが認められたとするならば、その誤った戸籍の記載の訂正は必要であるが、右訂正はあらかじめしないでも後に、裁判所の判断に基づきこれをなせば足ると解される。
要するに、控訴人が嫡出子として戸籍簿に記載されていても、それが虚偽であるとするならば人事訴訟をもって戸籍簿上親とされている者との間の親子関係の不存在を確定し、戸籍訂正の手続を経由してからでなくとも、直ちに認知の訴を提起することが許されると解すべく、その点において本件訴は不適法でなく、その他本件訴に不適法な点を発見することはできない。
(吉岡 園部秀 兼子)